カタカナ切継法による新日本語入力「継配列」
2020年1月18日更新
継配列とは
カタカナの切り継ぎを利用した新しい日本語入力法です。
文字を切り取るとき「切」、文字に線を継ぎ足すとき「継」を押します。
以下の「切り字」「継ぎ字」のルールにより、26キーで五十音を全て打てます。
連想のしやすさを特に配慮しましたので、丸暗記しようとする必要は全くなく、使っていく中で自然の身についていきます。
打鍵動画を公開してます。ご覧ください。
切り字・継ぎ字も含めて一つの配列表に書くとこうなります。
最初はフルの配列表で練習するのが良いかもしれませんが、少し慣れたらぜひ1キー1文字の簡略な配列図を見て、切り字・継ぎ字を連想しながら入力できるか試してください 。
他の配列との打鍵数分布比較
kouy様の「1万字のかなを入力する場合の打鍵数」(https://kouy.exblog.jp/7888078/) を参考に、デファクトスタンダードであるQWERTY配列、中指シフトの王様である月配列2-263 (http://jisx6004.client.jp/tsuki.html) と継配列の打鍵数分布を比較しました。
注目してほしいのは右下の総打鍵数です。月配列2-263 (13275打/1万字) と比べて継配列 (13949打/1万字) では5%ほど打鍵数が多いですが、文字入力キーを32個から28個に減らした事を踏まえれば御の字でしょう。
継配列はカナ配列としては少し打鍵数が多めですが、それでもQWERTYローマ字 (17019打/1万字) よりは遥かに少ないです。
月配列2-263と比べた他の違いは、継配列のほうが小指は使います。また左右のバランスはエンターとバックスペース考慮すれば継配列のほうが良いと思われます (2-263は明らかに右手が忙しいです)。
継配列はカタカナ切継法による入力法を特徴としていますが、カナ配列としての純粋な打鍵効率も決して悪くないといえるでしょう。
実装方法
本配列の実装はGoogle日本語入力のローマ字テーブル変更と、DvorakJによるカタカナ直接入力の設定の二段階からなってます。
配列本体の実装 (Google日本語入力ローマ字テーブル編集)
Google日本語入力のローマ字テーブル編集機能を使うことが最も簡単なので、これを説明します。
①まず、以下からGoogle日本語入力をダウンロードします。
②次に「継配列ローマ字テーブル」を以下からダウンロードしてください。
③Google日本語入力の「プロパティ」を開きます。
私の環境ではタスクバーにGoogle 日本語入力のマークが出てるので、その隣の「あ」(または「A」) と表示されてる部分を右クリックしメニューから「プロパティ」を選択すれば開けます。このマークの位置はお使いの環境によって異なるかもしれません。 (Microsoft IMEのままになってる場合はWindowsキー + スペースキーを押してください(Windows 10ならば))。
④Google日本語入力のローマ字テーブルの編集画面を開きます。
プロパティの画面で、一番上が「ローマ字入力」になっている事を確認し、一番下の「ローマ字テーブル」で右の「編集」をクリックします。
⑤ローマ字テーブルを「継配列ローマ字テーブル」に変更します。
以下のような画面が出てていると思いますので、下の「編集」から「インポート」をクリックし、②でダウンロードした「継配列ローマ字テーブル」を選択してください。
⑥ローマ字テーブルが変わったか確認
以下のような画面になれば成功です。
これで配列自体は実装できました。ただし①エンター・バックスペースの位置変更と②カタカナ直接入力の設定ができていません。①はキー入れ替えソフトを使えばできますが、①②セットでフリーソフトのDvorakJを用いる事で可能なので、次にそちらの説明です。
カタカナ直接入力の設定 (DvorakJとGoogle日本語入力の連携)
入力中に常にカタカナで表示させておき、確定や変換によってカタカナが自動的にひらがなに変わるようにするには少々工夫が必要です。
ローマ字テーブルにカタカナを直接打っても、Google日本語入力ではひらがなや漢字へ変換されません (Micosoft IMEでは可能。ただしローマ字テーブル編集の機能が乏しく継配列は実装できない)。そこでカタカナ直接入力モードを使うことにします。ただしカタカナは直接に漢字へ変換することはできないので、変換前に「ひらがなに表示切り替え」を自動実行するようにします。まとめますと設定が必要な点は次のとおりです。
・ (半角/全角キー等で)日本語入力オンと同時に「全角カタカナに入力切替」に切り替え
・エンターで「ひらがなに表示切り替え」を実行してから「確定」
・スペースで「ひらがなに表示切り替え」を実行してから「変換」
これら設定では「普段使ってないキー」が1つ必要です。ここでは「変換キー」を使わないという前提でご説明します。Google日本語入力の設定で認識するキーであれば、たとえばファンクションキー等でも構いません (ただし「カタカナ/ひらがなキー」は駄目でした。F13~F24が無難ですが、設定がややこしいので割愛します)。実際に押すわけではないので、お使いのキーボード上に無いキーであっても構いません。
⑦Google日本語入力でキー選択の編集画面を開く
まず、Google日本語入力のプロパティを開き、「キー設定の選択」の右端にある「編集」をクリックします。
②「入力キー」でソートし「Henkan」の欄を見つける
上の「入力キー」を押すとキーごとでリストの順番が変わります。次に下にスクロールすると変換キーの設定欄がそれぞれ4行ずつ見つかる筈です。
⑧入力中・変換中に「ひらがなに入力切替」、入力文字なしで「全角カタカナに入力切替」に割り当てる
Henkanキーの左のモード欄と右のコマンドの欄を見ます。右の欄をそれぞれ3回クリックするとコマンドを変更できるので、以下のように設定します。
「変換前入力中」 →「ひらがなに表示切替」
「入力文字なし」 →「全角カタカナに入力切替」
また直接入力と変換中の設定は使わないので削除してください。「入力キー」の欄で右クリックし「エントリーを削除」を選択すると行が消えます。
変更後の画面はこのようになります。
⑨DvorakJを導入する。
こちらで配布されていますので、ダウンロードしてください。
https://blechmusik.xii.jp/dvorakj/
「実行バイナリ版」で大丈夫です。ZIPなので解凍すると「dj_2014-06-07」というフォルダができます。
⑩DvorakJ用継配列設定ファイルをダウンロードする。
エンター・バックスペースの設定はGoogle日本語入力ではできませんのでDvorakJを利用します。設定ファイルは以下からダウンロードしてください (QWERTYでIとLをそれぞれエンターとバックスペースに変更しただけです)。
継配列DvorakJ設定用ファイル.txt - Google ドライブ
ダウンロード後は先程の「dj_2014-06-07」フォルダの「data」フォルダの中に移動してください。
⑪DvorakJで継配列の設定ファイルを読み込む
DvorakJ.exeを実行し、左側の画面から「日本語入力」を選択し、右側の設定ファイルの「選択」
をクリックし、「参照」から先程ダウンロードしたテキストファイルを選択してください。
⑫「全角/半角」「Enter」「Space」入力時に「変換」を同時出力するように設定する。
次に右の「単一キー」の「[Esc]など」をクリックします。左のキー名が「[全角/半角]」の欄で直接入力時・日本語入力時共に「そのまま」から「★独自の設定」に変更します。
次にすぐ下の入力欄で以下のように入力します
直接入力時 → {全角/半角}{変換]
日本語入力時 → {変換}{全角/半角}
順序に気を付けてください。設定後は以下のようになります。
次に左の欄に戻り「[Enter]など」をクリックします。Enterについて、先程と同様に2箇所「★独自の設定」に変更し、今度は以下のように入力してください。
直接入力時 → {変換]{Enter}
日本語入力時 → {変換]{Enter}
両方、{変換}が先です。入力後は以下のようになります。
次に左の欄にまた戻り「[無変換]など」をクリックします。同様に「★独自の設定」にして以下のように入力してください。
直接入力時 → {変換]{Space}
日本語入力時 → {変換]{Space}
入力後は以下のようになります。
⑬ちゃんと設定したのにうまく動かなかったら
DvorakJは挙動が不安定なことがよくあります。うまく動かなかったら「ファイル」から「再起動」を押してください (私の場合、起動後はいつもBS・Enterが効かず、必ず再起動してます。。その後は安定しますが)。 また、それでも調子悪い場合は左の欄の「IMEなど」から「Google 日本語入力を使用している」にチェックをしてみて試してください。
以上で設定は終わりです!お疲れさまでした。
外部デバイス「かえうち」(https://kaeuchi.jp/) を用いた実装も考えてますので、近いうちに公開します。
その他の配列表
トップの配列表はキーを格子状に並べたものですが、JISキーボードのように斜めズレの図のほうが見やすい場合は以下の表をお使いください。
参考にした配列・入力手法
・月配列2-263 (http://jisx6004.client.jp/tsuki.html)
両中指前置シフトの代表であり、JISかな・NICOLAに次いで有名なカナ配列かと思います。薬指濁点も参考にしました (交互打鍵主体であれば薬指高頻度になってもよい、という仮説)。
・葦手入力 (http://ashide.otodo.net/)
カタカナから漢字を直接入力するという画期的な入力法です。こちらを知って「カタカナに対して葦手入力と同じような事をすれば新しい入力手法にならないか?」と考え始めたのが継配列開発のきっかけかもしれません。
・月見草配列 (https://w.atwiki.jp/keylay/)
後置シフトの有用性を知りました。独特の「ゃ」「ゅ」「ょ」後置シフトは残念ながら実装法が限られる事から継配列では断念。人差し指が届かないYの位置に文字キーを置かない事も参考にしました。
・英月配列 (https://twitter.com/madeinwariofan/status/1147041872583331842)
人差し指・中指の同手シフトの有用性と、直感的に連想容易なシフト面について参考にしました。
・薙刀式 (http://oookaworks.seesaa.net/article/456099128.html)
30キー以内で納める重要性。格子配列・自作キーボードで実装できる事の有用性。「モーラ」を打ちやすくする配慮。機能キーも含めた配列設計等、多くの事を参考にしました。
・新下駄配列 (https://kouy.exblog.jp/13646791/)
中指だけではなく薬指も軸としてる事や、指の頻度が人≒中≧薬≫小でありそれでも小指を軽視していないという点は参考になりました。高速入力でも結果を出していながら、実質的に31キーで納めている点も参考にしました。
・韓国語入力
ちょっとだけ触る機会があったのですが、直接入力でハングル文字が後置シフト方式で形を変えながら入力される様は、まさに継配列で真似したところです。
・NICOLA (http://nicola.sunicom.co.jp/thumb2.html)
小指の頻度をだいぶ考えさせられました。各小指9%というのは高いという事で批判もされますが、一方で特殊配列の中では最も使用者の多い配列ではあります。継配列では小指の頻度を下げきれていませんが、「NICOLAより小指頻度低ければいいか」という妥協点を与えてくれました。
挙げきれませんが、他にもさまざまな配列や開発者様から影響・刺激を受けてました。ここに感謝申し上げます。